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静岡県三島市にある内科クリニックです。
標榜科:内科・循環器科・呼吸器科
総合内科専門医、循環器専門医の知識を生かして診療を行っています。

医療法人社団久仁会 宮内まこと記念クリニック
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 貧  血

〔血液とは?〕

 細胞が活動するためには酸素と栄養を供給し、排出される老廃物の回収も行わなければなりません。これを担っているのが血液です。体内を流れる血液の量は体重の約13分の1(約7.5%)に当たり、体重60kgの人には約4.5Lの血液があります。 

血液は「血漿」成分と「血球」成分に分かれ、その割合は血漿が55〜60%、血球が40〜45%です。血球には赤血球、白血球、血小板という3種類の細胞があり、血液1μL当たり、赤血球は450〜550万個、白血球は4000〜1万個、血小板は15〜45万個含まれています。赤血球は全身に酸素を運び二酸化炭素を回収し、白血球は免疫システムとして体内に侵入してきた細菌やウイルスなどの病原体と戦い、血小板はケガなどで血管が傷ついた時にその損傷部位からの出血を止めます。血漿は消化管から吸収された栄養分やミネラルなどを循環させて全身に運び、同時に老廃物を受け取ります。また血球を全身に運ぶ役割も担っています。血漿の約90%は水分で、ほかにタンパク質、脂質、糖質やミネラル、ホルモンや酵素などを含んでいます。

   〔血球の産生〕

 血球のもととなる造血幹細胞は、胎児期の肝臓や脾臓から次第に骨髄へ移動し、成人では胸骨や肋骨、脊椎骨、大腿骨の骨髄に集中します。赤血球にも約120日という寿命があり、老化した赤血球は脾臓で処理されます。日々、骨髄で赤血球が造られますが、ほぼ同じ数の赤血球が処理され、赤血球の数は一定に保たれています。 体内には約4gの鉄が存在しています。その約7割は体内で機能する機能鉄で、残りは肝臓、脾臓、骨髄、筋肉などに蓄えられる貯蔵鉄、そして筋肉、皮膚、粘膜、毛髪、爪などに含まれる組織鉄です。この機能鉄が赤血球中のヘモグロビンの成分になります。 

貧血はいまや女性の10人に1人いるといわれるほど身近な病気です。原因はさまざまですが、赤血球の数が減る事で全身の細胞が酸素欠乏に陥るため、全身にさまざまな症状を引き起こします。

〔原因〕

 ●骨髄での赤血球の生産量が低下している場合  貧血の中で最も多い鉄欠乏性貧血はこれが原因です。赤血球は骨髄で造血幹細胞から造られますが、原料の鉄分のほかタンパク質やビタミンB12、葉酸などが不足しても赤血球を造れず貧血になります。造血幹細胞の障害のため赤血球の産生ができない再生不良性貧血もあります。腎臓は赤血球産生を刺激するエリスロポエチンを分泌していますが、そのエリスロポエチンが減少するために起こるものもあります(腎性貧血)。

 ●何らかの理由で赤血球が破壊されている場合  赤血球が破壊される(溶血)でおこります。やけど、蛇毒、溶血性貧血などの自己免疫性疾患等が原因です。マラソンなどの運動による足裏への反復衝撃や、急激な筋肉の伸縮で赤血球が血管壁とすれるなどして、血管内の赤血球が破壊され貧血になる事もあります。

 ●体内のどこかで継続的に出血が起きている場合 

 慢性的な病気のために出血が続き、気がつかないうちに貧血が起こっている場合があります。月経過多、子宮筋腫、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんや大腸がんなど消化器の病気などがあります。成人男性や閉経後の女性にみられる鉄欠乏性貧血は、何らかの病気で出血している可能性を考えます。

〔症状〕 体調:疲れやすい、だるい、めまい、動悸や息切れ、顔色が悪い 痛みなど:肩こり、頭が重い 食事:食べ物が飲み込みづらい、口の端が切れる、舌の表面がツルツルになる 肌・髪・爪:爪がスプーン状になる、爪が割れやすい、枝毛・抜け毛が増える、肌がカサカサになる 

     ※何故女性に多い?? 

一般的に鉄欠乏が起きやすいのは、鉄の需要が増大する乳児期から2歳の間、思春期、そして妊娠中です。この時期に食事から摂る鉄の量が不足すると鉄欠乏になります。貧血の中で最も多い鉄欠乏性貧血では、生理で血液を失う女性が圧倒的になりやすいといえます。男性は女性と比べると赤血球数が多いです。なぜ男性のほうが赤血球の数が多いのでしょうか?骨髄における造血幹細胞の分裂には造血因子が関わっており、造血因子によって赤血球の数も左右されます。腎臓から分泌されるエリスロポエチンも造血因子のひとつです。腎臓が低酸素状態になるとエリスロポエチンを分泌します。エリスロポエチンは、造血幹細胞に働きかけ赤血球が造られます。男性ホルモンは腎臓でのエリスロポエチンの製造を促す働きがあると考えられており、男性ホルモンが豊富な男性はそれだけ赤血球も数多く造られることになります。男性ホルモンは70歳ぐらいから減少してくるため、それ以降は赤血球数の男女差が縮まります。

   〔検査〕

 貧血の目安となる値は、ヘモグロビン濃度が血液1dL中に男性で14g以下女性で11g以下です。貧血も経過観察ですむものから重症のものまであるので、詳しく診断するためにはさらなる検査が必要です。          

赤血球数(RBC)    男性:450〜600万個/μL 女性:400〜500万/μL      

ヘモグロビン濃度(Hb) 男性:14〜18g/dL    女性:12〜16g/dL      

ヘマトクリット(Ht)  男性:41〜51%     女性:37〜46%     

平均赤血球容積(MCV)    正常値:81〜100fl      

平均赤血球色素濃度(MCHC)          31〜36%

〔ヘマトクリット〕  

ヘマトクリットとは、血液を遠心分離し、底に沈んだ血球成分の層の厚さを百分率で表したものです。血球成分には白血球や血小板も含まれていますが、そのほとんどが赤血球で占められているため、ヘマトクリット値はほぼ赤血球容積とみなされます。 平均赤血球容積(MCV)  ヘマトクリット値と赤血球数から算出されます(赤血球1個の容積の平均)。この値が高いと悪性貧血や葉酸欠乏性貧血が疑われ、この値が低いと鉄欠乏性貧血が疑われます。 平均赤血球色素濃度(MCHC)  ヘマトクリット値とヘモグロビン量から算出されます(一定容積の赤血球に含まれるヘモグロビンの量)。この値が低いと鉄欠乏性貧血が疑われます。

 

網赤血球 

 

 網赤血球とは造られたばかりの若い赤血球の事で、これが赤血球全体の中にどれくらい含まれているかを調べれば、血液の製造元である骨髄の機能がチェックできます。正常値は1〜2%で、数値が低い場合は骨髄機能低下による再生不良性貧血が、数値が高い場合は赤血球の寿命が短いために起こる溶血性貧血が疑われます。

   〔治療〕

 原因を取り除く  鉄欠乏性貧血には慢性出血や偏った食事など何らかの原因があり、まずは原因を調べる必要があります。若い女性では原因不明の場合もありますが、閉経後の女性や成人男性では、まず原因となる疾患を治療する事です。 鉄欠乏性貧血の予防  成人男性は1日に約12〜15mg、成人女性は15〜20mgの鉄分が必要だといわれています。女性は月経、妊娠、授乳などのため、鉄分が失われやすく、男性よりも多くの鉄分が必要です。 規則正しくバランスのとれた食事を心掛けます。食事を抜いたりインスタント食品で簡単に済ませたりすると、鉄を摂取しにくくなります。特に成長期の子供や閉経前の女性は注意が必要です。普段から鉄分を多く含む食物を摂るように心がけ、鉄を添加した食品やサプリメントを利用する事も効果的です。 鉄分を補給する  食事からの摂取で貧血が改善しないときは、鉄剤を服用する事で直接鉄分を補給します。1日1〜2錠の鉄剤(鉄量で100〜200mg)を服用します。貯蔵鉄まで不足している場合には、貯蔵鉄を回復させるためさらに服用を続ける必要があります。鉄が胃腸の粘膜を刺激するため、1割ぐらいの方に、吐き気やむかつき、下痢などの副作用があります。その場合、鉄剤の服用を空腹時から食後に変えたり、鉄剤の服用量を減量したりします。 

緑茶、コーヒー、紅茶に含まれるタンニンが、鉄と結合して吸収を妨げます。食事中や食後は控えます。鉄剤は糖衣錠(徐放剤)となっているため、ティータイムなどに1〜2杯飲む程度なら問題はありません。

〔食事〕

 

鉄欠乏性貧血には、主に鉄分、タンパク質(ヘモグロビンの構成要素)の摂取が必要となります。国民栄養調査では、鉄の摂取量は50歳以下の女性すべての年齢層で基準値以下の結果でした。ビタミンB6・C、銅、ラクトフェリンなどがその吸収を高めます。鉄は銅、亜鉛などと相互作用があり、鉄欠乏では血液中の亜鉛濃度が低く、銅濃度が高くなっています。 食生活上の原因として 小食、偏食のため鉄分、タンパク質の摂取量が少なくなっている。 成長発育、月経、妊娠、授乳、過激な運動、スポーツのために摂取量が間に合わなくなっている。 鉄分の多い食品

 大豆、大豆製品、 牛・豚・鶏のレバー、牛もも肉、 小松菜、ほうれん草、春菊、切干大根、プルーン、ひじき、もずく、のり、あさり、牡蠣(かき)、しじみ、 いわし丸干し、まぐろ赤身、かつおなど鉄とともにたんぱく質、ビタミンC、正常な赤血球を造るために必要な葉酸やビタミンB12を鉄分とともに摂りましょう。たんぱく質の多い食品肉や魚、豆腐、卵などビタミンCの多い食品ブロッコリー、さつまいも、小松菜、カリフラワー、赤ピーマン、芽キャベツ、キウィフルーツ、オレンジ、いちご、柿など葉酸の多い食品ホウレンソウ、ブロッコリー、アスパラガス、芽キヤヘツ、モロヘイヤ、枝豆、納豆などビタミンB12の多い食品牛・豚・鶏のレバー、さんま・にしん・いわし・さばなどの魚類、かき・あさり・しじみなどの貝類、卵黄、チーズなど