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静岡県三島市にある内科クリニックです。
標榜科:内科・循環器科・呼吸器科
総合内科専門医、循環器専門医の知識を生かして診療を行っています。

医療法人社団久仁会 宮内まこと記念クリニック
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血圧とは

 血液は、人間が生命を維持していくために不可欠な酸素や栄養を体の各部分に運搬し、老廃物と炭酸ガスを運び去る役割を果たしています。血圧とは心臓から送り出された血液が動脈の内壁を押す力のことです。心臓は、収縮と拡張を繰り返して血液を送り出しているので、動脈の中の血圧は心臓の収縮、拡張に応じて上がったり下がったりします。動脈内の圧力が心臓の収縮中に最高に達したときの値が「収縮期血圧」、心臓の拡張中に最低に達したときの値が「拡張期血圧」です。

高血圧症とは

 高血圧というのは、血圧が高い状態です。たまたま測った血圧が高いだけでは「高血圧症」とは言い切れません。高血圧症とは、くり返して血圧を測っても、最高血圧が140mmHg以上、あるいは、最低血圧が90mmHg以上であれば、高血圧症と診断されます。

【原因】
1.本態性高血圧症

 原因の特定できない高血圧症で、高血圧症患者さんの90〜95%がこの範疇に入ります。遺伝的因子と生活習慣(環境因子)が複雑に絡み合って発病すると考えられています。本態性高血圧症は生活習慣病の代表といってもよい病気です。本態性高血圧症の発症に関与する悪い生活習慣としては、塩分過多、肥満、運動不足、過度の飲酒、喫煙、ストレス、自立神経の調節異常、肉体労働の過剰、蛋白質・脂質の不適切な摂取などがあります。


2.二次性高血圧症

 二次性高血圧症とは、他の病気に伴って起こる原因が明らかな高血圧症です。高血圧症患者さんの5〜10%がこの範疇に入ります。二次性高血圧症の原因としては腎臓、内分泌、心血管、神経の病気、妊娠中毒などがあります。



【症状】

 血圧が上昇しても自覚症状が現れないことが多く、「サイレントキラー(静かなる殺人者)」ともいわれています。高血圧症で見られる症状には、頭重感、頭痛、めまい、耳鳴り、のぼせ、吐き気、嘔吐などが見られます。さらに、高血圧症が高度になると手足の脱力感、しびれ、舌のもつれ、意識喪失、言語障害なども見られます。



なぜ高血圧症が悪いのか

 高血圧症はゆっくり進行し、様々な障害を生みます。高血圧は、全身の血管で血管の壁を硬くすることにより、さまざまな障害を誘発します。また、動脈硬化は高血圧を一層悪くし、悪くなると動脈硬化がより進むという悪循環ができ上がります。そして、心臓では虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞など)、心臓の肥大などが起こります。腎臓機能の低下や脳卒中(脳梗塞や脳出血など)、目では出血が起きて、最悪の場合失明することがあります。生活習慣病のひとつであり、肥満、高脂血症、糖尿病との合併は「死の四重奏」「Syndrome X」「インスリン抵抗性症候群」などと言われていました。現在はメタボリックシンドロームと呼ばれています。



どのように高血圧症と診断するのか?

 高血圧症の診断は血圧測定から始まります。さらに、高血圧症の診断には正しい血圧測定以外に少なくとも以下のような検査が必要です。
血液検査(電解質検査、腎機能検査、脂質検査、ホルモン検査など)、尿検査、心電図検査、胸部X線検査、心エコー図検査、眼底検査

 

家庭血圧の勧め

 家庭血圧測定は、白衣の前では緊張して血圧が上がる「白衣高血圧」や、病院では正常血圧ですが日常は高い「仮面高血圧」の診断、降圧薬の選定、治療効果の判定に役立ちます。家庭血圧は一定の条件で数多く測れますので、信頼性に優れています。高血圧に関係する心血管障害は、病院での外来血圧より、家庭血圧との関連が強いことがわかっています。

 家庭血圧は外来血圧より低いことが普通です。その差は平均すると10/5 mmHg程度ですが、外来と家庭の血圧差は個人差が大きく、50 mmHg以上になることもあります(白衣現象)。一部の人は、家庭血圧が外来血圧より高い「逆白衣現象」を示します。また、家庭血圧は朝が夜よりいくらか高い場合が多いです。家庭血圧では135/85 mmHg以上が高血圧となります。
 家庭用の血圧計は種々のものが市販されていますが、上腕用のものがお勧めです。手首用、指用のものは再現性が低く勧められません。家庭血圧は、朝(起床後)と夜(就寝前)に測定するのが理想的です。朝は、排尿後に座って静かにして測りましょう。測定時は腕帯(カフ)を心臓の高さに保つようにします。5分ぐらいの安静の後に、1回だけ測定しましょう。2回測定した値を平均をしても構いません。血圧は毎日測って記録するのが望ましいことですが、時々でも測ることが重要です。めまいや頭痛などの自覚症状があるときには追加して測定しましょう。血圧は常に変動していますから、数値にあまり神経質にならないようにして下さい。
 医師たちは、家庭血圧を大いに参考にしています。高血圧症の治療では、外来血圧より家庭血圧を重視していると言ってもいいくらいです。ただし、そのためには家庭血圧が正しく測定されていなければなりません。家庭血圧に基づく治療で、白衣高血圧や白衣現象の著しい患者さんに、不要な降圧薬の使用を避けることができます。また、家庭血圧は朝が夜より高い場合が多いと述べましたが、この傾向は降圧治療により、強くなることがあります。朝の血圧が外来血圧や夜の血圧よりかなり高い場合、薬の種類や服薬時間を変更することで改善が期待できるでしょう。ただし、自分勝手に薬を調節するのは禁物です。

生活習慣の改善
 日本高血圧学会の新しいガイドラインでは、①食塩制限②野菜・果物の摂取、コレステロールや飽和脂肪酸(動物性脂肪)の制限③減量(肥満の是正)④運動⑤アルコール制限⑥禁煙の6点が基本とされています。

①食塩制限の目標は1日6g未満です。日本人の食塩摂取量は平均して1日約12gで、欧米と比べるとまだ多いです。個人差がありますが、1g減らすごとに約1 mmHgの血圧低下が期待できます。

②やさい、果物に含まれるカリウムを多くとることにより3~4 mmHgの血圧低下が期待できます。
③減量の降圧効果は明らかで、1 kgあたり1~2 mmHgの血圧低下が期待できます。
④運動をきちんと続ければ5~10 mmHgの低下が期待できます。
⑤アルコール摂取量と循環器病死亡との関係はU字型で、飲まない人より少し飲む人の方が死亡は少なく、酒量が多くなれば危険性は高くなります
⑥たばこを1本吸うたびに血圧は10~20 mmHg上がります。したがって、高血圧でたばこを吸っている方は、禁煙がとても重要です。

薬物治療

 降圧薬による治療が血管や心臓を守り、予後を改善することは明らかです。副作用が怖いとか、ずっと飲まなければいけないからいやだ、という方がいらっしゃいますが、薬を服用せずに放っておくほうがもっと危険です。
 降圧薬には多くの種類があり、汎用されているのは「カルシウム(Ca)拮抗薬」「アンジオテンシン変換酵素阻害薬」「アンジオテンシンII受容体拮抗薬」「利尿薬」「ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬」「ベータ遮断薬」「アルファ遮断薬」の7つのグループです。他に、中枢神経に作用する中枢性交感神経抑制薬や、血管拡張薬が用いられる場合もあります。副作用や、何か異常のある時は主治医に相談して下さい。治療における血圧の目標値は、140/90mmHg未満です。糖尿病の方の目標値は、130/80mmHg未満です。家庭血圧の降圧目標値はさらに低く設定され、135/85mmHg未満です。2019年に改定された高血圧治療ガイドラインでは、降圧目標がさらに厳しくなり、75歳未満の成人では、外来血圧で130/80mmHg未満、家庭血圧では125/75mmHg未満が推奨されています。



Ca拮抗薬

 心臓や血管の平滑筋では、筋肉が収縮する時にカルシウムが細胞の中に入り筋肉を収縮させます。カルシウム拮抗薬は細胞膜に直接作用して、カルシウムの細胞内への移動を妨げることによって筋肉の収縮を弱めます。その結果、動脈の平滑筋が拡張し、血管抵抗が減少して血圧が下がります。副作用としては、脈が速くなる、顔がほてる、尿量が増える、足のむくみなどがあります。



アンジオテンシン変換酵素阻害薬

 アンジオテンシンは体の中で作られ、現在知られている血圧を上昇させる物質の中では最強のものです。アンジオテンシン変換酵素が働いて強力な血管収縮・昇圧作用をもつアンジオテンシンIIになります。変換酵素阻害薬はここに働き、アンジオテンシン変換酵素の働きを阻害します。この薬はアンジオテンシンIIの量を減らし、末梢血管の収縮を防ぎます。このため末梢血管は拡張して、血管抵抗が減ることにより血圧が下がります。副作用としては、のどのイガイガ感や空咳があげられます。



アンジオテンシンII受容体拮抗薬

 強力な血管収縮・昇圧作用をもつアンジオテンシンIIが結合する受容体と呼ばれる部分に競合的に結合し、アンジオテンシンIIが効果を発現できなくする薬剤です。副作用としては、アンジオテンシン変換酵素阻害薬と違い空咳がほとんどなく、めまい、動悸があります。



利尿薬

 口から入る食塩は全て体内に吸収され、余分なものは尿となり体外に排泄されます。食塩の排泄がうまくいかないと体の中に余分な水分を抱え込むことになります。この排泄を助けるのが利尿薬です。利尿薬は腎臓に作用して尿量を増し、余分な水分と食塩の成分であるナトリウムを排泄して、血圧を下げます。尿量を増やさない少量の利尿薬でも、ナトリウム排泄が認められ、降圧効果が期待できます。副作用としては、低カリウム血症、脱水、尿酸値の上昇、血糖値の上昇などがあります。



ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬

 

  ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は、従来アルドステロン拮抗薬と言われていたものです。近年、ミネラルコルチコイド受容体の新たな作用機序が続々と明らかになり、高血圧症のみならず、腎不全、心不全の病態進展に重要な役割を果たすことがわかってきました。塩化ナトリウムは高血圧の原因として重要な物質です。アルドステロンは、ナトリウムを体の中に貯めこみ、循環血液量を増加させ、心拍出量と末梢血管抵抗を増加させます。ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は、アルドステロンの働きを阻害し、降圧効果を示します。副作用としては、めまい、頭痛、消化器症状などがあります。

アルファ遮断薬、ベータ遮断薬

 交感神経は神経末端から分泌されるノルアドレナリンという物質が、受容体に結合することにより引き起こされます。また、交感神経の受容体にはアルファ受容体とベータ受容体の2種類があり作用が異なります。血管を収縮させるのがアルファ作用、心臓の収縮回数の増加や血液量の増加をさせるのがベータ作用で、どちらも血圧を上げる原因になります。
 アルファ遮断薬は末梢血管を収縮させるアルファ受容体を遮断し、交感神経の働きを抑えることで、血圧を下げる薬です。副作用としては、たちくらみ、めまいなどがあります。
 ベータ遮断薬は、その受容体の一つ、ベータ受容体の作用を遮断し、心臓に対する交感神経の働きを押さえて心臓の脈拍を減らし、血液の拍出量を減らして血圧を下げます。副作用としては、脈が遅くなる、手足の冷え、息切れなどがあります。