狭心症

心臓狭心症とは

   

心臓は24時間、365日、休むことなく働き続けており、1日に約10万回、1年で約3700万回、収縮と拡張を繰り返しています。そこから送り出される血液は1分間に約5L、1日で約7200Lにもなります。その心臓を動かすエネルギー源となる血液を、心臓に送り込むのが「冠動脈」です。心臓の表面をあたかも冠(かんむり)の様におおっています。加齢とともに、また複数の危険因子により、冠動脈の血管壁にコレステロールなどがたまり、動脈硬化が進行するにつれて、血管の内側が狭くなります。血液が十分に流れない状態にまで狭くなると、心筋細胞(心臓の細胞)に供給される血液が不足し、「心筋虚血」になります。虚血状態になると、心臓がSOS信号を発信し、胸痛や胸の圧迫感を感じます。これが狭心症です。

   

現在、日本人の死因の第2位を心臓病が占めており、その多くが虚血性心疾患で総称される狭心症や心筋梗塞です。その原因である動脈硬化には、危険因子として高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満、喫煙などが関わっています。

   

【分類】

 

   安定狭心症と不安定狭心症  

 

 安定狭心症とは、発作の起きる状況や強さ、持続時間などがほぼ一定で、大きな変化が少ない狭心症です。運動をして心拍数が上昇し、心臓に負担がかかると胸痛を自覚し、休んで心拍数が元に戻り、心臓の負担が軽くなると症状が消えます。堅いプラーク(コレステロールなどの固まり)の動脈硬化によって、血管内腔が狭くなっていることが多いようです。すぐに心筋梗塞に移行する可能性は低いと考えられています。安定狭心症は一定の労作で起こるため、労作性狭心症とも呼ばれます。 

一方、不安定狭心症とは発作の回数が増加したり、胸痛がだんだん強くなったり、以前は発作が起きなかった軽い運動や安静時に胸痛がおこったり、持続時間が長くなったりします。この状態の血管内は、崩れやすいプラークの動脈硬化が存在することや、血栓(血の塊)ができていること、あるいは血管のけいれんが起こりやすくなっていることが原因とされています。近い将来に心筋梗塞を発症する可能性が高いと考えられており、特に注意が必要です。

   

冠攣縮(かんれんしゅく)性狭心症

   

 冠攣縮性狭心症とは冠動脈が急にけいれんして細くなり、心筋への血流が不足するために胸痛発作が起きるものです。夜の睡眠中や早朝、飲酒後などに胸痛を自覚します。労作中におこる狭心症に冠攣縮を併発する場合もあります。

   

【症状】

 

 

狭心症発作は、胸の中央からみぞおちにかけての広い範囲で胸痛が起こります。圧迫されるような、息が詰まるような、あるいはしめつけられるような痛みを感じます。痛みは表面的なチクチク感などの様に感じる痛みではなく、体の深いところに広く感じます。首、背中、左右の腕、肩、顎、歯、上腹部に生じることもあります。心臓 ヨレヨレ冷や汗、吐き気、おう吐、呼吸困難を伴うこともあります。「ここが痛い」と指でさせるような狭い範囲の胸痛は、狭心症でないことが多いです。発作の持続時間は長くても15分間程度で、30分以上続く事はまれです。逆に1分にも満たない短いものは狭心症でないことが多いです。強い胸痛が30分以上続く場合は心筋梗塞が疑われます。速やかに救急車を要請しましょう。

   

【検査】

 

   心電図

   狭心症では、発作がない時の心電図は正常なことが少なくありません。発作時には異常が現れますが、30分ほどで消失しますから、病院に着く頃には元の状態に戻っていることが多いです。心電図 

 

 

 

 

 

ホルター心電図 

狭心症は発作が起きた時に心電図に異常を示すので、ホルター心電計を用いて24時間連続で心電図を記録します。ホルター心電計は携帯できる小型の心電計で、胸に電極をつけたまま日常生活を行います。これにより、日常の中で起こる心電図の異常を発見する事ができます。

Sホルター高橋 

 

 

  トレッドミル負荷試験

  運動をして心臓に負荷をかけ、連続して心電図変化をみる検査です。マスター階段昇降、自転車エルゴメーターなどもありますが、当院にはトレッドミル負荷検査があります。Sトレッドこれは、動くベルトコンベアーの上を歩いて負荷をかけます。負荷中に血圧や心電図の変化を見る事ができるほか、十分な負荷をかける事ができるため、運動負荷試験の中では最も正確な情報が得られる方法とされています。 

 

 

 

 

 

心エコー図検査 

心エコー図検査とは、高周波の超音波を心臓にあて、はねかえってくる反射波(エコー)を処理して画像で表示するものです。この方法で心臓の動きがわかり、心筋梗塞をはじめとするほとんどの心臓病の診断に威力を発揮します。また、弁の動き、弁からの血液のもれもわかります。検査方法は胸部にプローベという超音波の発信と受信を行う器具を当てるだけです。

 

   心筋シンチグラフィー 

心筋シンチグラフィーとは、心筋に選択的に取り込まれる放射性同位元素を注射し、一定時間後に特殊なカメラで放射性同位元素の位置や量を測定し、映像として映し出す検査です。この検査で心筋への血流や心臓の機能がわかるため、狭心症や心筋梗塞など虚血性心疾患の診断に使われています。検査に用いられる放射性同位元素が体内に残留する事はなく、被爆量もごくわずかです。

 

   マルチスライスCT

最近、CT(コンピュータ断層撮影)を撮影することで冠動脈を観察できるようになりました。手の静脈から造影剤を点滴しながら撮影します。造影剤を使う点では心臓カテーテル検査と同じですが、それ以外の侵襲はなく、外来で施行できます。CT新しいCT機器であるマルチスライスCTは、体軸方向に並んでいる複数の検出器を備え、1回転で複数のデータを収集できるCTです。一度のX線照射で同時に撮影するため、スライス画像間にズレが生じにくいです。また、被爆量が少なくてすむだけでなく、撮影時間も大幅に短縮できます。呼吸を止めにくい乳幼児や高齢者、重篤な患者でも鮮明に撮影ができます。マルチスライスCTは、外来で施行できる検査法として、入院が必要な心臓カテーテル検査に代わっていくものと考えられています。

 

   

 

 

 心臓カテーテル検査 

カテーテルと呼ばれる細いビニールチューブ(太さ13mmぐらいの柔らかいチューブ)を手足の動脈から心臓の血管内へ送り込み、これを通して造影剤を血管内に注入し、冠動脈をX線撮影するものです。冠動脈の血流の状態や狭窄部位を映し出す事ができるので、狭心症や心筋梗塞など冠動脈病変の確定診断に用いられます。カテーテルの挿入は局所麻酔をした上で施行します。造影剤の副作用で吐き気やじんましん、血圧低下などの症状が現れることがありましたが、最近では造影剤の改善によって副作用は少なくなってきました。

 

  

【治療】

 

 狭心症の治療法は大きく分けると、食事や運動を中心に生活を改善する「非薬物療法」、薬剤で発作を予防する「薬物療法」、カテーテルによって体の外から冠動脈内を治療する「カテーテル療法」、手術によって血管を再建する「外科療法」があります。

薬物療法

狭心症発作を予防するために、冠動脈を拡張する薬【血管拡張薬(硝酸薬、カルシウム遮断薬)】や、心臓の働きを抑える薬(ベータ遮断薬)などが使用されます。

 硝酸薬硝酸薬は血管の拡張作用があり、冠動脈を拡張させる目的で投与されます。また、末梢の血管を拡張させるため、心臓に戻ってくる血液量が減り、心臓の負担を軽くする効果もあります。即効性硝酸薬として発作薬に使われるのがニトログリセリンです。発作時に投与すると23分で効果が現れるため、患者さんは普段からニトログリセリンを持ち歩くようにしています。作用の持続時間は15分程度です。薬剤のタイプには舌下錠、口腔内スプレーなどがあります。

持続性硝酸薬の代表としては硝酸イソソルビドがあります。硝酸イソソルビドに即効性はありませんが、長時間作用するため安定労作性狭心症の発作予防に効果があります。しかし、長期に使っていると薬が効きにくくなることがあります。

 

 カルシウム拮抗薬

カルシウムは血管が収縮するときに働きます。カルシウム拮抗薬はこのカルシウムの働きを抑えることで、冠動脈を収縮させる平滑筋を弛緩させ、冠動脈を拡張させます。安定労作性狭心症にも投与されますが、特に冠動脈のけいれんを抑えるのに有効で、冠攣縮性狭心症の予防に効果を発揮します。

         薬カプセル

 β遮断薬

 β遮断薬には心臓の働きを活発にする交感神経の作用を遮断する働きがあり、心拍数を少なくすることにより、心臓の仕事量を減らす事ができます。心臓の仕事量が減少すると心筋が必要とする酸素量も減少し、狭心症の発作予防に効果があります。ただし、この薬には気管支を収縮する作用があるため、気管支喘息のある人には使用する事ができません。

 

 カテーテル療法

カテーテル療法とは前述のカテーテルを動脈に入れ、冠動脈へと運び直接冠動脈内の血行を改善させる治療法です。狭心症や心筋梗塞の代表的な治療法となっています。カテーテルの挿入は局所麻酔をした上で、脚の付け根の大腿動脈、肘の上腕動脈、手首の橈骨(とうこつ)動脈から行われます。

 

  ●経皮的冠動脈形成術(PCI PCIは、先端に小さなバルーンがついたカテーテルを冠動脈に通し、動脈硬化や血栓によって狭くなっている(狭窄)部位を、体外からバルーンに圧力をかけて膨らませ、狭窄部位を内側から広げる治療法です。しかし、治療後6ヶ月以内に再び冠動脈が狭窄してしまうケースが3040%あり(再狭窄)、その場合には再び治療が必要となります。

 

  冠動脈内ステント

 金属の網でできたステントと呼ばれる筒を、カテーテルのバルーン部にかぶせ、狭窄部分へ運び、バルーンが膨らんだ際にステントを血管内部に押しつけて、血管を内側から補強する治療法です。ステントが使用できるようになりPCIの再狭窄の問題点がかなり改善されました。治療後もステントはそのまま冠動脈内に残って冠動脈の狭窄部位を支えているので、再狭窄が通常のバルーン療法に比べて少なく、治療後6ヶ月以内の再狭窄率が20%前後に低下しました。最近では、さらに再狭窄率を低下させる目的で、再狭窄の原因の一つである細胞増殖を防ぐ薬を表面にコーティングした特殊なステントが開発され、治療効果を上げています。これは薬剤溶出ステントといい、徐々に薬剤が血管壁に浸透し、細胞の増殖を抑制することにより再狭窄を防ぎます。治療後6ヶ月以内の再狭窄率は10%以下に抑えられると報告されています。

 

 

  ●冠動脈バイパス手術

 冠動脈バイパス手術はカテーテル手術と違い、狭窄した冠動脈はそのままに、狭窄部をまたぐように新しいバイパス(側道)をつくり、心筋への血流を改善する治療法です。バイパスに使用する血管は、動脈と静脈とが両方使われます。動脈では内胸動脈、橈骨動脈、右胃大網動脈など、静脈では下肢の大伏在静脈などです。手術には人工心肺装置を使用し、心臓の拍動を止めて、すばやくバイパス用の血管を心臓の血管につなぎ合わせます(オンポンプ手術)。最近は、人工心肺装置を使用せず、心臓を動かした状態でバイパス手術する方法が広がってきています(オフポンプ手術)。これは心臓を局所的に圧迫し、吻合を行う場所だけを動かないように固定する装置(スタビライザー)を使用し、バイパス手術を行います。手術による侵襲が少ないため、リスクの高い患者さんにも手術ができるようになってきました。          

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